ご家族の皆さまへ:

 ネフスキー物語同様に、このページでとりあげるニコライ・ネフスキーに関する内容はロシアで出版されている資料や、直接ロシアの関連ウエブサイトから得られた多くの情報の中から宮古島キッズネットが独自に翻訳・編集したものです。 また、当時の宮古島の状況がより正確に伝わるように、翻訳した内容にコメントや解釈を加えることなくネフスキーの言葉を出来るだけストレートに伝えることを心がけています。
 このページでの掲載方法は、ネフスキーのメモや聞き取りの記録をまとめるのではなく、あくまでもそのメモや記録を個別に掲載することで、ネフスキーの宮古島における調査内容が現代の読者にも、より活き活きと伝わることを目的としています。
 ただし、児童が直接読むことを考え、子供には刺激の強すぎる表現部分は他の適切な児童向け表現に言い換え、成人向けの内容は削除してあります。
 
ネフスキーが初めて宮古島を訪れたのが、1922年の8月。 その時の宮古島の印象で最初に書かれていた事が以下です。

宮古島は、地理的には日本本土から数百マイル離れた離島だが、台風の多い荒れやすい海に囲まれたこの小さな島は、驚くほど昔の風景と暮らしが残っており、数世紀前のまるで平安の時代もこうではなかったのではないかと思われるほど、人々は独自の文化と日常のなかで生活している。

世界で起きている多くのことは、恐らくこの島を素通りしてこの海のはるか先の大地に届き、この島に影響を与えることは無かったのだろう。

島全体がスッポリと実験室の保育器の中で守られていたように、宮古島の自然、その中で暮らす人々の暮らし、文化、方言の全てが、全く外部の影響を受けることなく純粋培養され発展したものと思われる。

琉球王国による先島支配が始まるまで、この島はほぼ外界から閉ざされており、宮古島域内の島々でも往来が一般住民に及ぶことはあまりなかったと考えられる。 この結果、言語学上でいう 「古代の原語体系が地域内で温存、醸成された状態」で、独自の発達をしてきたのだろう。

 
ネフスキーが初めて伊良部島を訪れた時のメモです。

平良港から出航した汽船は伊良部島の裏側に回り、下地島との間の海峡というより川のように見える水路に入ると間もなく浅瀬になり係留した。 桟橋は船に届かず、乗客はそれぞれ着物やズボンの裾をたくし上げ、陸へと向います。 その様子を見て私も靴を脱ごうとしていると、汽船の乗組員が私を背負って上陸させてくれると言ったので、私は喜んでその言葉に従った。

伊良部島では島の周回道路に沿って5つの村があり、これらを併せて一つの地域コミュニティが出来上がっている。 この島の人口は約 4,500人らしい。
この島の小学校で、私のための歓迎会が開かれた。 参加者の中には、村長の KUNINAKA KANTO 〈 國仲寛徒) をはじめ、島の役人や有力者もたくさん参加していた。 校舎の中には、既に敷物が敷かれテーブルが用意され、挨拶の後ごはんや豆腐などが出された。

國仲村長にはこの後頻繁に会い、民俗学上貴重な多くの話を聞かせてもらった。
 
初めて触れた伊良部島での島の風習 “むなかじ” あるいは “むな”

伊良部島での調査を終了した日、平良に戻るために船を手配してくれるように頼んだ。 すると、多くの人が “むな” と短く応えるだけで、一向に船を出してくれない。 私はこの状況に少しいらだち、重ねて船を出せない理由を聞くと、“むなかじ” あるいは 「月の風が吹いたから船は出せない」 というような意味のことを言う。

海が荒れているわけでもないのに船が出せなくなる “むなかじ” とは、モンスーンの時期に突然襲ってくる季節風の一種なのだろうかと考えもしたが納得がいかなかった。 その後も何人かに尋ね、私はやっと “むなかじ” が季節風や特定の方角から吹く風のことでなく、動詞の 「虚しくなる」 から来ているもので、この島ではなにか予想外の事が起きた時や悲しい出来事を、「虚しい風が吹いた」 と表現しているようだ と気付いた。

この時は私が船を出すように頼んだ2日前に、漁にでていた漁師が海に落ちて死亡したために、島では弔いの意味を込めて、“むなかじ” が吹いた後の数日間は島の風習に従い、船を出さなかったようだ。
 
妊娠とヤギの肉 – その1

伊良部島と宮古島の他の一部地域でも同じ風習があるようだが、出産が近づいた女性にヤギの肉を食べさせるとのこと。 この島では、ヤギの肉は下剤のような働きをするといわれており、出産も下剤を飲んだ時のように楽に産めるようにと願ってのこと。
 
妊娠とヤギの肉 – その2

出産の時以外、妊娠中はヤギの肉を食べてはいけない。 その掟を守らずヤギの肉を食べると、生まれてくる子供はヤギのように人の言うことを聞かない子になると信じられている。
 
妻の妊娠中は、生き物を殺したりしない。

伊良部島や宮古島の一部では、妻が妊娠中夫は生き物を殺してはいけないといわれている。 生き物を殺したりすると、生まれてくる子供に良くない影響が出ることがあるといわれている。
また、夫は仕事をする時にもケガをすることがないように気をつけなければならない。 もし妻が妊娠中に夫がケガをすると、生まれてくる子供の体に良くない影響が出るかもしれない。
 
妊娠中は葬式に出ない。 

妊娠中は葬式に出ないようにする。 また、妊娠中は葬儀の列を目にすることもいけないといわれている。 そのため、妊娠中は葬式のある日は外出することが禁じられる。
 
病を癒した佐良浜のユタは、何といって祈っていたのか?

佐良浜の住人の間で話題になっている、あるユタの話。
佐良浜の男性が原因不明の病で鹿児島の病院に3年間入院していたが、いっこうに回復しなかった。 やむを得ず佐良浜に戻った男は、島のユタに相談した。 そうすると、ユタは魔法のように体を動かし何事かを低くつぶやきながら祈ると、その男の病がたちどころに癒された。

私はこのユタの話を聞くと、会って話を聞きその魔法の言葉がどのようなものであるのかの口述筆記をぜひしたいと思った。
しかし、残念ながら短い滞在期間でこのユタに会うことができず、聞き取り調査をする機会が無かった。

後で分かったのは、ユタは歴史的にも人を惑わす存在として何度も取り締まりの対象となっており、当時も警察によるユタ禁止令による取締りやユタ刈りという可能性もあったので、特に外人に会うことは避けたかったのだろう。
 
川の無い佐良浜

佐良浜地区には全く川が無い。 そのため人々は雨水をためて使うか、3.6km離れた井戸に水を汲みに行く。 でも、この井戸の水はとても塩辛かった。 沖縄の他の島々と同じように、女性たちは頭に石油缶をのせてこの井戸から水を運んでいる。
 
民間療法 その1  一番効くのは?

宮古島でも、平良を除いてはほとんどの村に医者はいない。 また、いる村でも基本的には医者による治療をあまり信じていないようだ。
そのため、多くの住民は病気になると古くから伝わる民間療法に頼る。 数多くの治療法があるようだが、中でも重い病にはこれが一番効くと信じられているのが、ヤギの血を飲むこと。 これは実際に多く行われているようで、色々な病気に有効だと聞いた。

ただ、村人によると治療のために生きたヤギを 木からつるし、ヤギの血管を切って竹の筒で直接患者に飲ませるという。 その理由を聞くと、ヤギの血は新鮮でまだ温かいうちに飲まないと効き目がないからだと言った。
 
民間療法 その2  ここでもヤギ?

夜盲症 (とり目)といわれる人たちがいるが、宮古島の民間療法で最も効くといわれているのが、ゴキブリ。 ゴキブリは大きなものほど治療効果が高く、 調理をして食べるようだ。 またゴキブリがすぐに見つからない場合は、ヤギの肉を油で揚げて食べると、同じように効くらしい。
 
子供の遊び歌で知る民間療法

民間療法では、治療のために何が使われているのかを知ることも、とても興味深い。
例えば、下地地区の子供たちの遊び歌を調べていると、その歌詞の中に次のようなことが出てくる。

ああ~、たいへん、腹が痛い。
唐辛子食べたら、もっと痛くなったよ。
卵食べたら、痛みが止まったよ。
意地悪の “ズイボティシコ (お腹ちゃん)”。

(注: “ズイボティシコ [zhivotishko])” の部分は、ネフスキーの IPA 国際音声記号によるメモをアルファベットに置き換えたものです。 これまで、この部分についての意味が不明でしたがロシア語に詳しい方より 2015年3月、以下の内容を教えて頂きました。
「ジヴォティシュコ」は、ロシア語の「животик(ジヴォティク)(お腹)の「子指形」(ーーちゃん)、即ち「お腹ちゃん」と思われます。

より正確に言うと、原型は「животик(ジヴォティク)(お腹)であり、語尾に「шко(シュコ)」=女性形なら「шка(シュカ)」=の「子指形」 (ーーちゃん)が付いて「животишко(ジヴォティシュコ」に。
 
参考資料:
1. Николай Александрович Невский (fb2)
2. ромковская Л.Л., Кычанов Е.И. Николай Александрович Невский
  Ответственный редактор В.М.Солнцев. М.: «Наука», ГРВЛ, 1978. 216 с.
  (Gromkovsky LL, Kychanov EI Nikolai Nevsky. Nauka, GRVL, 1978)
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