アルコールが成長期・思春期の脳に与える影響
 
 
成長期の子供が酒を飲むと、大人が酒を飲んだ場合とまったく違った障害が脳の大脳や海馬といわれる部分に、一時的ではなく一生残ります。
成長期の子供が酒を飲んではいけないのは、このためです。
 
海馬(かいば)の働きと酒の影響について:
   
脳の中心部で脊髄(せきずい)に近いところに、人間の記憶に欠かせない大切な海馬(かいば)と呼ばれる器官があります。

私たちが見たり、聞いたり、読んだことは記憶として一旦すべて海馬に集められます。 海馬は記憶の短期貯蔵庫のようなところと覚えてください。
 

ここからが、海馬のすごいところです。

海馬に集められた記憶は、記憶情報として他のものと分類されます。
そして、私たちが思い出したいと考えた時にいつでも電子信号さえ送れば引き出せるように、つないでおきます。

また、良く思い出す内容は大切な情報と判断して、記憶の長期保管を受け持つ大脳へ送ります。 ところが、つないでも思い出すことの無い記憶は、海馬が覚えておく必要の無い記憶と判断して、電子信号を送るラインを外してしまい、記憶が削除されます。

このように、海馬はどの情報を記憶として長く残しておく必要があるのかを判断してくれ、またその記憶をどこに送るかの整理をしてくれる大切な場所です。

ところが、この海馬の機能を妨げるもののひとつが、お酒・アルコール飲料です。
特に10歳から18歳くらいの成長過程・発達段階で飲酒を続けると、その後の人生に大きな影響を与える多くの障害が残ります。

1. 海馬の成長が妨げられ、正常に育たない。
2. 海馬が成長の途中なのに萎縮(いしゅく -ちぢんで小さくなること)が始まり機能が落ちて、情報の整理がうまくいかなくなる。
3. 記憶力が伸びないので、記憶障害をひきおこす。
4. 正常な精神的発達ができず、精神障害になる。
 
大脳の前頭葉・前頭前野の働きと酒の影響について:
 
 
大脳の前頭葉と呼ばれる場所は、人が生きるための状況判断をする場所と言われています。

1. 状況判断力 (状況を正確に理解して、どのような状況にあるのかを知る。)
2. 計画性 (どの方法にするかを考えたり、計画する。)
3. 実行力 (計画したとおりに実行する。)
 
また、前頭前野と呼ばれる場所は脳の司令塔とも言われる場所で、前頭前野で学習した後はその内容によって脳の他の部分にまかせるなどの高度な作業ができます。
ところが、この前頭葉・前頭前野も未成年者が酒を飲み続けることで、この部分の成長が止まったり、萎縮して作業が出来なくなるなど、大きなダメージを受けることが分かっています。 それらは・・・


1. 状況判断がうまく出来なくなる。
2. 思考力が落ちるので集中力が無くなり、物事に無関心になる。
3. 情報の伝達機能がうまく働かないので、計画することや実行することがとても難しくなる。
 
大脳の白質領域と酒の影響について:
 
 
脳の前頭葉に白質領域 (はくしつりょういき)と呼ばれる場所があります。 白質領域は、神経信号を伝える通信ケーブルが混線して情報がごちゃ混ぜにならないようにケーブルを白い幕で包み込み、保護しながら伸ばして張り巡らせます。

この白質領域はじっくりと20年くらいかけて完成する場所なので、未成年の時に酒を飲むとこの白質領域の発達が止まり、神経信号が上手く伝わらなくなるという重大な障害が残るそうです。
参考資料:
1. Cortex Journal, Oxford University Press.
2. Wellesley College, Chemical Department.
3. National Institutes of Health
4. CDC (Center for Disease Control and Prevention), Behavioral Risk Factor Surveillance System
 
 
WHO(世界保健機構)は、定期的に酒やタバコ、麻薬など依存症になりやすい製品の世界的な現状をデータにまとめ発表しています。 一番最近の発表は2011年2月の第64回 WHO国際会議でした。 それによると、
 
   
1. アルコール依存症に関連した死者数は世界で年間約 250万人。
2. その内の約 32万人が 15歳から29歳までの青年で、全体の 13%になり、調査ごとにこの比率が高くなっています。
3. 15歳から29歳までの青年で、酒が原因となった事故による死亡者数は、同年代の死亡者総数の9%です。
 
 
また、第64回 WHO国際会議では、13歳から15歳までの子供の酒類の使用体験に関する調査結果が発表されました。 それによると、13歳から15歳までの子供のうち、女子の14%、男子の18% がお酒を飲んでおり、この段階で家族の指導や学校などで酒を飲むことによる問題点についての教育がなされていない場合、子供たちのアルコール摂取は確実に習慣化するということです。

またこの会議では、すべての年代におけるお酒の社会問題について発表されました。

1. 全世界の死亡者のうち男性の6%、女性の1%は酒が原因だった。
2. 死因の分析の結果、酒を飲むことで200以上の病気の症状を悪化させていたことが解かった。
3. 酒を飲む人は、酒を飲まない人よりも平均寿命が10年短いことが解かった。

なお、この報告書には世界の飲酒人口の統計もあり、男性の50%、女性の75%は全く酒を飲まないか、飲酒が習慣化していないということです。 

ただし警告として、アジア、アフリカ地区の若年層の飲酒傾向が高くなってきているので、この地域では今後大きな社会問題となる可能性があり早急に対策が必要だということです。
 ( WHO Report Feb. 10, 2011 )
  
 
子供の酒の問題が世界的に注目されたのは、2001年スエーデンのストックフォルムで開催されたWHOのヨーロッパ諸国会議で発表された内容が衝撃的だったためです。
その時発表された統計内容は以下のようなものでした。
  
1. 1995年、世界全体で15歳から29歳までの男性の死亡者の5%は酒が原因で死亡している。
2. 東ヨーロッパでは、15歳から29歳までの男性の死亡者の25%は酒が原因で死亡している。 1999年、この地域では55,000人の若者が死亡した。
3. 酒を飲み始める年齢として注意が必要なのは10歳から15歳で、この期間中の家庭教育や社会活動により、酒を飲み始める時期を遅らせたり、弊害に関する教育をすることで依存症の比率を下げることができる。
( 2001 WHO European Ministerial Conference on Young People and Alcohol, Feb. 19, 2001)
このサイトはすべて宮古島キッズネットのオリジナル翻訳・編集による、児童の教育目的に限定しての資料です。 教育現場では自由にお使い頂けますが、一般サイトへの引用・転載・転用することは出来ません。
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 ご家族の皆さまと考える子供と酒の問題 


 何かを良くしたい時や解決したい時に一番大切なことは、「現実をしっかりと理解する、つまり本当はどうなんだろうか?」を知ることだそうです。 私たちの大好きな宮古島にも、素晴らしいところと直していきたいことや、問題となっていることもあるはずです。

「みんなで考える広場」は、宮古島で問題となっていることを考え、「本当はどうなんだろう?」をしっかりと捜し、どうしたら良くすることが出来るかをみんなで考える広場です。

 宮古島キッズネットに寄せられている意見で一番多いのが「宮古島の人(特に、おじいや父親、夫、そして若い男の人たちや、時には男女学生までも・・・)がお酒をたくさん飲むので、自分の子供たちも同じようになるのではと、とても心配です。 どうしたらいいのでしょうか?」という問題です。

 確かに、宮古島ではお酒が各家庭の居間や台所にたくさん並び、アルコール飲料が日常的に手に届くところにあり、多くの家庭では頻繁に酒盛りがおこなわれています。 子どもの目から見ても、人が集まり賑やかに振る舞い、おじいや父親や兄たちも楽しそうに酒を酌み交わす様子を小さいときから見ていると「お酒は、そうとう楽しいものらしい!」との思いを持つのも無理からぬことです。

 でも子供たちは、全ての宮古島の大人たちが認識しているお酒の社会的弊害や、健康上のネガティブな現実に気づくことが出来ません。 そこで、「みんなで考える広場」の最初のテーマを 「お酒の問題」 にしました。

 この問題はとても年齢幅が広いので、宮古島キッズネットではこのテーマの年齢層を 10歳から大学生及び働く22歳くらいまでの若い人たちを対象とした資料を中心に数多く紹介します。

 この年代の人々が将来お酒の影響を受けないために、お酒と健康に関する子供向けの知識としてWHOなどによる未成年のアルコール被害統計や、世界の研究機関から発表される最新の研究結果などを紹介します。

 お酒による健康被害や人間関係および社会的損失の実態を伝え、若年層からはじまる飲酒が、生涯を通じてのアルコール依存症や健康障害、社会問題に繋がる人生とならないようにするための対策を早い時期から始める必要があります。

 家族のみなさんも参加し、子供たちと話し合うための参考にしてください。


 若年層の飲酒問題と取り組んでいる方はすでに読まれたと思いますが、オックスフォード大学出版部が発行する Cerebral Cortex Journal (大脳皮質ジャーナル誌)の2013年1月30日号で、若年層の飲酒と脳への影響についての最新研究報告が掲載されました。

 Cerebral Cortex Journal は、@神経メカニズムA思考プロセス B行動形態などについての研究に関する専門誌です。

 宮古島キッズネットでは、 これらの最新研究結果などをふまえ、子供の飲酒が精神発達上どのような影響をもたらすのかについて、10歳から18歳の成長過程にある子供に関する資料を中心に紹介していきます。

 また、このコーナーでは専門用語や科学用語をできるだけ使わずに、子供が日常使う言葉でアルコールによる神経機能への影響や伝達メカニズムにおよぼす科学的変化を、分かりやすく説明していきます。

 白質領域 (White matter Tracts) の詳しいメカニズムは、National Institutes of Health の Dr. R. Douglas Fields の研究発表がありますので、より詳しく知りたい方は参考にしてください。

宮古島キッズネット 運営管理部

  
 

参考資料:
ご家族での話し合いの参考として、宮古島キッズネットの運営組織である宮古島プロジェクトによる 「宮古島において、酒による社会的損失がどれくらい大きいかの考察と、実際の酒による健康被害、酒による家庭崩壊の実態の検証。」 も併せてお読みください。

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